第19回講演1抄録



痛みのない歯科治療の実際

 皆さんは,歯科治療にどのようなイメージを持たれるでしょうか。歯科治療は「痛い」「怖い」のが当たり前で,我慢しなければならないものだと思ってはいませんか。少なくとも決して進んで受けたい治療ではありませんね。おそらく大部分の方は,「痛みがひどくならないように」「いろいろなものをおいしく食べられるように」「いつまでも美しくいるために」など,自分にとって大切なものを守るために,敢えて我慢して治療を受けているのではないでしょうか。当たり前なことですが,本当は「痛くない」「怖くない」歯科治療を望んでいるのだと思います。
 「痛みのない,快適な歯科治療」は歯科医と麻酔医の協力で提供されます。麻酔医は通常,手術室で様々な麻酔をかけたり,重症な患者さん(外傷,大手術後など)の全身管理を行ったり,ペインクリニックと呼ばれる痛み(顔面痛,肩こり,腰痛など)の治療を行っています。実際の歯科治療において,顎の骨にまで及ぶ大きな手術の場合には全身麻酔,それ以外はほとんどが局所麻酔によって,痛みが取り除かれます。全身麻酔は完全に意識も取り除かれるため,痛みを感じることがありません。しかし,局所麻酔だけで歯科治療を行いますと,意識が残っていますので,処置中の音が聞こえたり,振動が響いたりします。これは決して快適なことではありません。一般歯科医院で行われている治療は通常はこのレベルでしょう。そして,それが当たり前だと皆さんも感じていらっしゃるのではないでしょうか。
 今回の講座では,どんな時に麻酔医が歯科治療に必要なのか,そして,麻酔医はどのようにして痛みをコントロールして「快適な歯科治療」にかかわるのかについて,分かりやすくお話ししたいと思います。