第20回講演抄録



一生,おいしく,楽しく,安全な食生活を送るための口腔健康法
  〜食べる機能のリハビリテーションとは〜

 介護を必要とする高齢者(要介護高齢者)は,現在全国で430万人ほどです。2015年には650万になり,2025年には800万人以上になると予想されています。事故にあったり,病気にかかったりして,口から食事ができなくなったとき,点滴で命がひたすら長らえることに,満足はできないでしょう。生涯通じて,ひとに迷惑をかけず,健康に暮らせることは誰もが願うところだと思います。
 近年,口腔ケアが要介護状態にならないようにする有効な手段であることがわかってきました。口から食事ができずに点滴で管理されていたり,たとえ口から食べていても食べたいメニューが思うように食べられなかったりする障害を「摂食機能障害」といいます。手や足に体操やリハビリテーションがあるように,口にも体操やリハビリテーションがあります。それが,摂食機能療法(せっしょく きのうりょうほう),あるいは摂食・嚥下リハビリテーション(せっしょく・えんげ)です。これは手術をするわけでもなく,薬を飲むわけでもありませんが,確実に生き甲斐を与え続けていく養生法です。
 健康とは,体に病気が無いことではありません。かりに体に障害があっても,たとえ不治の病にかかっていても,人は健康に暮らすことができます。「旅行がしたい」「ご近所と交流がしたい」「外食がしたい」など,各人が持つ自己実現達成のために,口腔ケアは大きな力となることでしょう。
 健康と幸福について,口腔ケアを通じて考えていきたいと思います。