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講習会開催履歴

2010年

  1. 【演題】Functional analyses of Bone Morphogenetic Protein (BMP) signaling during bone formation and craniofacial development
    「BMP(骨形成因子)の骨組織発生とリモデリング, 顔面形成における機能解析」
    【講師】Yuji Mishina, Ph D
    Associate Professor, Biologic & Materials Sciences, University of Michigan, School of Dentistry 
    ミシガン大学歯学部生物材料科学科 三品裕司 先生
    【日時】平成22年7月5日(月) 午後5時半~ (90分程度を予定)
    【場所】第3講堂(4号館3階)
    【対象】大学院生, 学生, 教員
    【要旨】
    BMPは異所的に骨を誘導する因子として単離, 同定された。BMPの骨形成, リモデリングへの機能を調べるために, 骨芽細胞特異的にBMPリセプター(BMPR1A)をノックアウトしたところ, 予想に反してミュータントマウスでは骨量, ミネラル密度ともに増加した。骨の形成量自体は低下していたが, 骨芽細胞でのRANKLの発現の低下, OPGの発現の上昇がみられ, これによって破骨細胞の形成が抑えられており, 造骨破骨のバランスがくずれたことによって骨量が増えたと考えられる。また, Wntのインヒビターであるスクレロスチンの発現が非常に低下しており, BMPは骨芽細胞において, スクレロスチンの発現を通してWntシグナルを調節し, OPG/RNKLを介して破骨細胞の分化を制御していると考えられる。
    また, BMPシグナルを神経堤細胞特異的に過剰発現させたところ, 頭蓋の縫合線に融合が見られ, マウスは頭骸骨融合症特有の形態を示した。ヒトの頭骸骨融合症の原因として知られているFGFシグナルとの関連について議論したい。
  2. 【演題】エピジェネティクスの異常が引き起こす精神発達障害 -Mecp2とRett症候群-
    【講師】伊藤 雅之先生
    国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第2部 室長
    【日時】平成22年7月8日(木)17:30-19:00
    【場所】 第3講堂(4号館3階)
    【対象】大学院生, 学生, 教員
    【要旨】ワトソン, クリックによるゲノム構造の発見以来, わずか50年ほどの間にヒト遺伝子配列をすべて解明した。その結果, ヒトとサルの間にはわずか3%程度の違いしかないことが分かった。はたして, その表現型を決定しているのは遺伝子だけなのであろうか?この問いにはさまざまな学域から多くの見解が示されたが, 最も有力で確実なのがエピジェネティクス機構の関与である。エピジェネティクスとは, ゲノム構造以外の要因で生じる遺伝子発現機構である。生物における発生から老化に至るヒトの一生は, 高精度な四次元に組織化された遺伝子発現によっている。
    これまでの人類遺伝学の歴史の多くはゲノム構造の異常の解明であった。しかし近年, エピジェネティクス機構の異常によってもヒト疾患がもたらされることが分かってきた。ここに紹介するレット症候群は, 乳幼児期から生じる発達障害を特徴とし, 筋緊張の異常, 骨格の異常など多臓器にわたる障害を年齢依存的に呈する疾患である。この原因であるメチル化CpG結合タンパク2(MECP2)は, 遺伝子プロモーター領域のCpGに結合し, 転写を抑制する機能を有する。そのため, レット症候群はMECP2の機能障害によるエピジェネティクス機構障害の代表的な疾患と考えられている。
    今回の講義では, レット症候群を中心にエピジェネティクス機構とその障害の奥深さを紹介する。