衛生学教室の前野正夫教授(写真)と本橋正史准教授は、(財)ライオン歯科衛生研究所との共同研究で、「歯周病」と「メタボリックシンドローム(メタボ)」との密接な関連性を明らかにし、平成20年10月4日に行われた第57回日本口腔衛生学会で、同研究所の森田十誉子副主任(本学大学院歯学研究科、社会人大学院生)が発表した。 調査は、東京や大阪など9都道府県の24〜60歳の有職者男女2,478人を対象に、肥満(BMI)、高血圧、脂質異常、高血糖をメタボの指標として用い、歯周ポケット保有(CPI)を歯周病の判定基準とした。歯周ポケット保有者は全体で28.4%、メタボ指標の基準値超過項目が1つの人は27.1%、2つは16.7%、3〜4つは8.2%、皆無は48.0%であった。これらの解析結果から、メタボリスクを抱えている人は、20〜30歳代でも歯周ポケット保有者の率が明らかに高い値を示したが、性別や喫煙習慣に影響されやすいことが判明した。 そこで、性別や喫煙習慣の影響を排除する統計処理を行い、歯周ポケット保有者とメタボ指標の基準値超過数との関連性を調べた。その結果、メタボ指標の基準値超過数が多い群は、超過数が皆無の群に比べて、歯周ポケット保有者群に対するオッズ比が大きかった。また、基準値超過数が多いほど、歯周ポケット保有群に対するオッズ比も増大した。 以上のように、男女ともにメタボ指標の基準値超過数が多い人は、20〜30歳代の若い年代でも、中高年者と同様に歯周病リスクが高くなる傾向があることが明らかになった。前野教授らは、メタボの兆候のある人は、若い年代でも油断せずに口腔ケアの実践を推進し、全身の健診だけでなく、歯周病の健診をも受診し、口腔を健康に保つことが重要であると警告している。