第10回講演2抄録


入れ歯の材料いろいろ
 〜痛い入れ歯・痛くない入れ歯? 痛いのはアゴ〜

 入れ歯(床義歯)の役割は,顎口腔の形態(顔貌)および機能(摂食・咀嚼・嚥下,発音)の回復と維持にある。入れ歯を入れると,その役割のとおりにたいがいは,顔貌はそれなりに回復し,よく噛めるようになる。しかし中には,食べ物の味が少し変った,厚ぼったくて少し喋りにくい,初めはよかったがだんだん噛みづらくなってきた,入れ歯が硬いので噛むとあごの肉(顎粘膜)が痛い,などの不満も多い。このため,これらの不快事項を解消する入れ歯の材料への関心は高くなってきている。
 味が変わるという風味障害は,あごを覆う入れ歯の大きさと材質による口腔内感覚への影響である。以前より噛みにくくなった,噛むと痛いなどは,あごの経年変化(顎骨の萎縮,顎粘膜の菲薄化)によって入れ歯が合わなくなったためである。また,噛むとすごく痛い,噛むのがつらいは,薄く弾力のないあごの肉が硬い入れ歯と顎骨とにはさまれることによって起こり,顎骨に鋭縁や骨瘤がある場合も同様である。
 現在の入れ歯の材料を見ると,これらの不快事項のすべてを解消する万能材料はないが,それぞれの症例に対応した材料と技術の開発,改良は進んできている。そこで,入れ歯を入れるに際して,材料の説明を受けるときに役立つように,従来からの材料と新しい材料について,症例を交えてお話ししたい。

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