第11回講演1抄録


ミミズに癌はできない
 〜生体防御の戦略はヒトもミミズも同じ?〜

 皆さんの身近にいるミミズに興味を持ったことがありますか? 多くの女性からあまり評判の良くない,あのミミズです。この地球上には約4億5千年前から出現し,今日に至るまでほぼ形も変わらずに生息している生物です。地球上には約3000種いるといわれています。しかし,誰もまだ正確にその数がわかりません。雨上がりの後,道端に干からびてころがっている無残な姿をみたことがあるでしょう。我々の近くにいながら,意外と知られていないミミズの生態と微生物の感染や癌から逃れる生態防御因子についてお話をしてみたいと思います。
 ミミズの研究の歴史は古く,あのダーウィンも遺跡とミミズについて興味深い論文を書いています。我々はヒトの消化管や口腔の免疫研究から出発して,感染や癌に対する生体の防御のメカニズムを調べてゆくうちに,無脊椎動物の生体防御機構は基本的にヒトと同じであることがわかりました。生物は共通の生体防御メカニズムを持っており,この機能は外敵に対する防御というより個体の維持に必要な基本的な機能であると思われます。ミミズの細胞が持つ,ヒト癌細胞を殺すことができる抗腫瘍蛋白と,癌治療の夢をお話します。
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