第16回講演1抄録



歯を長くもたせるための治療法
 〜この歯抜かなくては駄目ですか?〜

 厚生労働省で推進する「8020運動」,「80歳で20本の歯を残しましょう」,「自分の歯で美味しく物を食べましょう」を合言葉に,歯科医療従事者と患者さんが一緒になって口腔衛生の管理に努力しています。口腔は外部から「食べモノ」が体内に入る最初の器官ですから,歯を含めた口腔内の諸器官はいろいろな仕事をつかさどっています。歯は,食物をかみ砕いて消化を助ける「咀嚼」の役割のほかに,熱い物・冷たい物などを区別する「感覚器」としての役割も担っていますので,歯を保存する努力を払うことは大切なことです。
 歯を喪失する主たる原因は,「虫歯」と「歯槽膿漏」といわれています。「虫歯」は歯自体の病気,「歯槽膿漏」は歯を支える組織の病気ですが,どちらも放置しておくと,最後には「抜歯(歯を抜く)」になってしまいます。最近では,歯科治療の進歩によって,極端なケースを除いては,歯を可能な限り保存する方向で治療方針を考えるようになってきました。昔ならば,即座に「抜かなくては駄目ですね!」と宣告されたようなケースでも,いろいろな治療法を用いて保存する努力を払うようになってきています。根の部分だけになってしまった歯(残根)であっても,根の治療を適切に実施して人工のクラウンを被せたり,ブリッジの土台に用いたりします。より自然の歯に近い状態に回復して,口腔の諸機能を維持するための治療を目指すようになってきています。
 ここでは,「虫歯」と,それに続いて発症する「歯髄炎(歯の神経の病気)」と「根尖性歯周炎(根の周りの病気)」という2つの病気にフォーカスを当てて,病気の実体とその治療法について,わかり易くお話したいと思います。

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